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臨床前実習-2

 聴覚障害があることで「医療面接(問診)」「聴診」「打診」「外科的手技」に問題がありそうだ、というところで前回は終わりました。
 次に、「どうして問題なのか」「問題に対処するには」ということを、4つのそれぞれについて解説しましょう。
 覚えておいてほしいのは、「人と同じようにできないことがあるかもしれないけれど、無理に人と同じようにする必要はないし、自分にあったやり方を見つければよい」ということです。ここで書いていることは、あくまでも「参考」にしてください。行動するのは、自分自身です。

【医療面接(問診)】
 「医療面接」と「問診」の違いはなんでしょうか。
 その基本は「病気を診るか、人を診るか」ということにあって、
問診:従来行われてきたもので、病気の診断に必要な情報だけを集める。
医療面接:患者さんとの信頼関係を作り、病気の診断に終始しない。
 ということになります。
 じっさい「医療面接」ができているかどうかは、コメントを控えさせてください(難しいね~)。「医療面接の技術」にはいろいろなものがあるのですが、これは講義でも学びますし、専門の本もあるくらいなので割愛します。

 さて、問診にしろ医療面接にしろ、生身の人間が相手になってきます。患者さんとのやりとりにおいては、会話すること、コミュニケーションすることが中心になってきます。まさに「医者と患者のコミュニケーション」の中核が「医療面接」にあるといっていいでしょう。
 ところが、ずばり聴覚障害を持っていると、「音声を介したコミュニケーション」が、程度の差はあっても普通に聞こえる人よりは苦手な傾向にあります。
 「何度も聞き返して嫌がられないだろうか」
 「患者さんの言っていることがわかるだろうか」
 ――「コミュニケーション」に関する悩みは尽きません。
 おそらく、わたしを含めてこれから医者になろうとする聴覚障害者にとって、最大の課題が「コミュニケーション」でしょう。逆に言えば、自分なりのコミュニケーションができると、働き方がぐっと広がるはずです。

 聴覚障害をもつ人が、医学生として「医療面接」を行うときのポイントは3つあります。
 (長いですよ!覚悟してください)。

(1) 自己紹介を丁寧にする
 「医療面接」では、「自分の名前を名乗り、患者さんのお名前を確認する」ということをふつうでもやります。通常は「医学科○年生の○○と申します」「研修医の○○と申します」で終わることが多いです。
 聴覚障害を持っている人の場合は、名前を名乗るだけではいけません。
 「患者さんに安心して受診していただくために、こちらの情報を提供する
 これを意識して医療面接をはじめます。
 具体的には
A. 耳が聞こえづらいことを説明する。
B. 自分のコミュニケーション手段を説明する。
 (読唇する、聞き返すことがある、紙に書いてもらうかも、手話通訳、など)。
C.そのため、時間がかかるかもしれないこと。
 この3つをおさえておきたいところです。
(例)「医学科○年生の○○と申します。今日は先生に診察を受けていただく前に、お話を伺いますね。その前に、わたしは耳が聞こえづらくて、口の動きを見ています。聞き返したり、紙に書いてもらうこともあるかもしれません。ちょっとお時間がかかってしまいますが、それでもよろしいでしょうか?」

 本当は聞こえの程度に関わらず、「あなたを診察するのはこんな医者なんですよ」ということがわかれば、まったく知らない誰か(医者)に診てもらうよりは、患者さんも安心できる…かもしれません。「聴覚障害があるからこうしなければいけない」のではなくて、「患者さんの信頼を得るために、自分の情報を提供する」ということを意識するほうがいいと思います。

■注意:例外がある!
 実習の際にはあまり考えなくていいことですが、実際の現場では緊急の事態であるとか、患者さんが終末期(ターミナル)の状態であるときには、「自己紹介を丁寧にする」ということが通用しないこともあります。
 たとえばターミナルの患者さんやご家族に、聴覚障害を持っていると告げることで、ただでさえ気苦労の日々であるのにこちらにまで気を遣わせてしまうということはありうる事態です。
 わたしも、実際にターミナルの患者さんの前では、自己紹介することができなかったことがありました。わからなければ、ただもう一度仰ってくださいと伝えました。
 また、緊急時には当然、丁寧に自己紹介しているヒマはありません。
 自己紹介するかしないか、というのは周囲の状況や患者さんの状態を見きわめてやらなければいけない、ということに注意してください。

(2) 自分のやり方で話を理解する・内容を確認する
 「自分のやり方で」ということが肝心です。
 手話通訳を使っても、ノートテイクを使っても、聞き返したり紙に書いてもらったりしてもいいのです。そうするのがいやだ、という患者さんは、ほかの人にお話を聞いてもらうことにします(周囲への根回しは忘れずに!)。いままでわたしが「耳が聞こえづらいんです」と言って、お話を聞かせてもらえなかったことはありませんが、念のため。
 自分のやり方でやることで、時間がかかってしまうことも大いにありえます。緊急度の高いときは使えない方法ですが、そうでない場合は時間をかけてきちんと聞く、ということを意識してください。
 いちばん怖いのは、「あやふやなままにしておいて、それが重要な情報だったとき」です。
 たとえば患者さんが、何かのお薬にアレルギーを持っているとしましょう。お薬の名前がよく聞き取れないとき、たぶんこうだ、という予測をしてはいけません。必ず確認します。書いてもらうなり、もう一度言うなり、自分でお薬の名前を書いてみせて確認を取ったり、やり方はあります。
 ひととおり聴きおわったら、メモを見せるなどして「こうですか?」「足りないところはありますか?」と伺うといいですね。
 これも、普通でも重要なことなのですが、残念ながら「時間がない」などの理由でおろそかになっていることも。医者の人数が足りていない、などの問題もあるのですが……。う~ん。

(3) 相手に自分の言葉が伝わっているか?
 聴覚障害のある人は、場合によっては「相手に自分の言葉を伝える手段」も考えなくてはなりません。特に、子供のころから高度の難聴があると、自分が発している「ことば」を自分で認識できずに発音が不明瞭になっていることが多いのです。
 もし、あなたが口話を使っているなら、患者さんに前もって
 「わたしの言葉がわかりにくかったら、仰ってください」
 などと、説明をしておいたほうがいいでしょう。
 あるいは手話通訳を介して、伝えてもらうこともあるでしょう。
 いずれにせよ、相手の言葉を理解するだけではなく、相手に自分の言葉を理解してもらわないといけません。

 この3つのポイントをおさえて、「医療面接」の実習を行います。たいていは学生どうしが医者役・患者役にわかれてやるか、「模擬患者さん」と実習するか、になるはずです。
 いってしまえば「医療面接の実習」は本当の患者さんを相手にするわけではなく、「ごっこ」になってしまうのですが、実習のときから上のことを頭において臨むほうが有意義だと感じました。
 すぐに、本当の患者さんを相手にした医療面接をしなければならなくなります。

 しかし、ほんとに長いですねー。
 息切れしていませんか、だいじょうぶですか?
 「患者さんとコミュニケーションする」ということは、医者人生を通しての大きな課題でしょう。わたしも、まだまだ全然できていないことだらけです。ぼそぼそと喋る患者さんと出会ったときは、正直どうしようかと思いました。
 けれども「自己紹介する・確認する」ことは、すぐにできますから、参考にしてみてください。
 次は、これまた難関の「聴診」です。

臨床前実習-1:前項|もくじ|次項:臨床前実習-3
文責:Kumiko

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