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なぜ医者になりたいか part.2

 part.1 では、わたしの経験をお話しました。
 こんどは、みなさんの番です。
 「なぜ医者になりたいか」

 どういう気持ちで医者になりたいと思っているか、それはあなたにしかわかりません。すごくハッキリしたものを持っている人から、漠然と「なんだか、医者っていいな」と思っている人までいろいろだと思います。わたしは前者に見せかけて、後者でした。
 でも、それでいいんじゃないでしょうか。
 いま自分が持っているものを大事にしてください。
 けれども、ほんのすこしだけその(どうしてかはわからないけれど)「医者になりたい」気持ちを、実現していくためのお手伝いをこれからお話しようと思います。

(1) 「なぜ医者になりたいか」を自分に問う
 最初に、なぜ医者になりたいか、医者になって何がしたいかを問いかけました。
 自分の中に、「医者として働く自分」を思い描けますか。
 「医者」というワクにだまされないでください。
 「医者になりたい」というとき、「医者」という外側のワクだけを見ていると、「自分が医者になってなにをしたいのか」ということが見えてこなくなってしまいます。
 (わたしも、最近までだまされていたクチです……)。
 「医者」「医学部」というワクの中で、自分がどう生きて、何を学んで、どう働いていくか、という世界を考えてみることがはじまりです。

(2) ほかの人とどう関わっていくかを考える
 「医者」というワクの中で自分が働くとき、そこにはほかの人が必ずいます。自分ひとりだけでは働けません。
 患者さんだけではなく、同僚、上司、ほかの医療職の人、その人たちがどう自分に関わってくるかをイメージしてみてください。「医者になりたい」という自分の思いに、他人がどう関わってくるか、です。
 それを考えたとき、自分の働きかたも見つけやすいと思います。
 たとえば一般に「お医者さん」というと、外来で患者さんを診て処置をして、というイメージがあります。そういうお医者さんばかりではないんですよ。病理学のお医者さん、放射線科のお医者さん、基礎医学や社会医学を研究するお医者さん、政府で働くお医者さん(医系技官)、会社や学校に関わるお医者さん(産業医)という働きかたもあるのです。
 くりかえしますが、自分のやりたいことに、他の人や社会がどう関わってくるかということを考えてみる必要があります。

(3) 具体的な構想をもつ
 「なぜ医者になりたいか」を考えに考え抜いて、ぜひこういうことを学びたい、社会人という身分を放り投げてでも勉強したい、と思って医学部にやってくる人たちがいます。勉強熱心で、モチベーションが非常に高い。
 いつも彼らのことを「すごいな、どうしてそんなに勉強し、行動できるんだろう」という、畏敬のまなざしで見ていました。
 理由を考えてみると、モチベーションが高いのももちろんですが、そのモチベーションを維持するための努力を彼らはしているように見えます。自分の「なりたい医者像」についての具体的な構想をもち、その医者像に近づくための手段を体系だてて分析し、行動しているのです。

 (1)から(3)を考えてみることが、はじまりです。
 そこから具体的にどういうことをしたくて、何を学びたいかを考えてみてください。
 また、やりたいことを「医者」というワクで考えていると、行きづまってしまいます。ボンヤリとでもいいから、「自分って、なにが好きで、なにをしたいんだろう」というところからスタートしてみてください。ときには、「医者」という職業自体を選ばないで、別の職業のほうがふさわしいということもあるはずです。

 たとえあなたが聴覚障害を持っていても、肝心なのは、あなた自身の「なりたい」という気持ちです。ただし、気持ちばかりが先走っていては、「どうして医学部にきてしまったんだろう、医者になれるんだろうか」ということになりかねません。恥ずかしながら、一時期のわたしもそうでした。
 現実を見る目も必要です。「働いていけるか」というところを考えないと、この先、厳しいと思われます。
 そこを考えてみて、「なんだか漠然としたままなんだけど、やっぱり医者になってみたい、働きたい」ということであれば、飛び込んできてください。
 そして、あなたの道を自分自身で歩いていく、切り拓いていくとき、なにか困ったことがあれば遠慮なくこちらに聞いてください。
 ただし、最終的に決めるのは自分です。
 わたしたちは、その「お手伝い」をさせてもらいます。

 (卒業しても、この会のことはなんらかの形で支援していこうと思いますし、ほかの会員が志を引き継いでくれることと思います)。

前項:なぜ医者になりたいか part.1
文責:Kumiko
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なぜ医者になりたいか part.1

 医者になるということを、みなさんはどう考えておられるでしょうか。
 どんな理由で医学部に入ることや、医者になることを選んだのでしょうか。
 「なぜ医者になりたいか」
 ということが、今日のテーマです。

 わたしの場合はといえば、はじまりは中学3年生の初夏でした。いきなり「難聴の研究をしたい!」というわけのわからないミョ~な使命感にボッと火がついたのが、そもそものきっかけだったようです。そして、どうもそういうことがやれるのは医学部であり、臨床ではなく研究をするという働き方によってだ、という漠然としたイメージで研究系の医者をめざすことにしました。
 思いこんだら「これだ!」と一直線なわたしです。漠然とした「こういうことができるだろう」という気持ちだけで、おりしも欠格条項改正の見込みが発表されたということもあり、ウッカリ医学部に来てしまいました。
 さて、医学部に入学しましたら、聴覚障害があっても臨床で働いている先生がいらっしゃるじゃありませんか!
 琵琶湖病院の藤田保先生(精神科医・難聴者外来担当)との出会いによって、いともあっさり「わたしも臨床で働けるかも、いや働きたい!」という方向に転んだわけです。
 ここからが迷路のスタートです。
 「臨床で働くお医者さん」という仕事を、ひどくあいまいなイメージでしかとらえてこなかったために、自分がなにをしたくて医学部に来たのか、どんな医者になりたいのか、そもそも何をしたいのか、医者になれるのか、という、考えてみれば根本的なことにぶつかってしまったのです。
 そのうえ専門教育課程の講義がはじまると、いままでのやり方が通じない。
 高校まで「自分の力でなんとかしてきた」と自負していたわたしにとって、このことは大きな衝撃でした(それまでだって、自分ひとりの力ではなかったはずなのですけれど)。講義に出て教科書を見るだけではわからない。いつしか講義から足が遠のいていき、立派な不登校児の出来上がり。結果的に、2年生を2回やることになりました。
 敗因は、思考と分析の欠如にあったのではないか、といまは推測しています。
 「自分は何をやりたいのか」
 「どうして自分は医者になりたいのか」
 この根本的な問いに対して、思考を停止させてしまいました。医者になりたいという気持ちだけが先走り、「医者とはどういう仕事で、どういう働きかたがあって、自分が患者さんに何を提供していけるのか、何を求められているのか、そもそも自分は医者になって何をしたいのか」という思考が抜け落ちてもいたのです。
 そのために、根拠のない漠然とした不安にさいなまれるということが長く続き、白状するといまもちょっと尾をひいています。
  なおかつ不安にさいなまれるだけで、考えるということをしてこなかったために、ずっと「問題解決の手段」を「自分ががんばることしかない」と思い込んできたのもまちがいのもとでした。
 (いまから思えばずいぶんと多くの人が、わたしを助けようとしてくださっていたのですが、その心に気づかず振り払ってしまったことが幾度となくありました。それにも関わらず、見捨てないで付き合ってくれた友人や先生がたには感謝の一念です)。

 さて、ずっと考えないできたこの問題。
 「なぜ医者になりたいのか」
 最終学年となったいま、そのことを改めて自分の心に聞いてみました。
 いまのわたしから出てきた答えは、やっぱりまだ漠然としていて「患者さんが病気や障害に付き合っていく手伝いをしたいから」ということでした。
 根治治療ができればもちろん、一時期の付き合いから別れまでをサポートすることになります。治療ができないのであれば、その病気・障害と付き合っていくことをサポートしたい、そう考えるようになりました。
 けれども、「病気や障害に付き合うお手伝い」だけであれば、なにも医者でなくてもいいはずです。
 いまはそういうお仕事がたくさんあり、医療系の職業だけをみても、看護師、臨床心理士、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士など、本当にさまざまです。カウンセラーや占い師、マッサージやアロマテラピーなどに癒され、救われる人もたくさんいます。
 また、いまは医者と患者と医療をとりまく状況はすごく厳しくて、「医者になる」という現実は甘いものではありません。多くの研修医や医者が、体にむち打ちながら働く現実。
 でも、病院に来てはじめて接する「お医者さん」として、患者さんの人生の一部に責任を持って関わりたい、そう考えています。そして、そういう関わりかたができるのが「医者」という仕事だと思います。本当はもっと大きな、個人をとりまく社会というものにも、医業を行うことでアプローチしていきたいけれど、これはまだ漠然としすぎています。
 それに、もっと心のシンプルなところから出てきたのは、「患者さんが良くなって、「よかった」と言ってくれるとうれしい」ということでした。
 正直な話、やっぱり「この仕事、向いていないんじゃないか」と思うこともあります。けれども、こういう患者さんとのやりとりを思い出すだけで「いや、もうやっぱり医者だ」と思える、単純にして猪突猛進なわたしであります。

 患者さんを含む人との出会いから多くのエネルギーをもらっていること、また人に対して自分も何かできることがあるのだと知ったことが、いまのわたしの力になっています。膨大な「覚えるべきこと」の量に死にそうになりながらも、なんとか勉強できているのはそのおかげかも。
 (今年、うちの大学は卒業生が全員合格したんだって。開学以来の快挙とか言っちゃって、すっごいプレッシャだよ、落ちてらんないよ、って感じだ……)。
 つぶやきにしては長かったか、反省。
 part.2 に続きます。次は、あなた自身のことを考えてみてください。

次項:なぜ医者になりたいか part.2
文責:Kumiko

CBT・OSCE

 専門教育課程を終えると、実際に病院での実習が始まります。
 しかし、そうすんなり病院で実習させてはくれません。
 たいていは5年生から病院実習がはじまるので、4年生の終わりに全国統一で「病院実習に行ってもいいかどうか」を見るための試験があります。
 この試験は、全国共通の「共用試験」となりました。
 これには
 (1) CBT (Computer Based Test)
 (2) OSCE (Objective Structured Clinical Examination)
 の2つがあります。

(1) CBT
 CBTはその名の通りコンピューターを使って行う試験で、4年間の知識の総まとめです。
 もう、「勉強してください」以外に言うことはありません。
 ここでの成績が国家試験の成績にも関係している、というコワ~イ事実があります。
 ひたすらコンピューターの画面を見つめて、答えをクリックしていくだけ、という気の遠くなるような試験です(しかし国家試験はもっと過酷です。3日間ですから)。
 あらかじめ、CBT対策の模試を受けて、どんな感じかをつかむのもいいでしょう。「CBTについての説明会」でわからないことがあれば、そこで聞いておいてください。当日になって「使い方がわからない!でも試験官の説明が聞こえない」では困ります。

(2) OSCE
 OSCE(オスキー)は、日本語でいうと「客観的臨床能力試験」です。
 つまり、臨床で実習するための、基礎的な診察法ができるかどうかをテストします。ですから、「臨床前実習」で学んだことをここで問われることになります。
 基本的に、複数のステーション(試験場)を会場として、1つのステーションを5分から10分程度の時間で次々に受験していく、というシステムです。
 あらかじめまわる順番と、どの時間にどこを受験するかが決められていて、その通りに受験していきます。
 ステーションはだいたい6つくらいで、大学やその年の傾向によって変わっていくみたいですが、「医療面接」「頭頸部」「神経系」「胸部」「腹部」「外科的手技(小外科)」「心肺蘇生法」そして「バイタルサイン」があるところもあるようです。
 聴覚障害のある人が、OSCEで気をつけたほうがいいポイントは3つあります。
A) 時間
コミュニケーションに時間のかかる特性があるので、時間を長くしてもらったほうがいいことがあります。自分でどのくらい時間がかかるのかを、「臨床前実習」で知っておきましょう。
手話通訳をつけるのであれば、どのステーションでも時間を長く取ってもらったほうがいいかと思います。手話通訳なしでも、患者役の人とコミュニケーションすることに不安があれば、時間を長くしてほしいと大学に申し出てください。
わたしの場合は、基本的な手技だけをやればいいようなところは普通の時間でまわりましたが、「医療面接」だけは倍の時間をいただきました。

B) 聴診
わたしが受験したときは、「CDの音を聞いて、何の音か答える」というような試験問題はありませんでした。しかし、「CDの音」対策として、もしそういう問題が出たら「人工内耳の外部接続端子とスピーカを直接つなぐ」ということで学生課と話をつけておきました。
また、自分の場合、血圧は聴診できたので、そこは対策が必要ありませんでした。
けれども、場合によっては聴診に代わる方法を、あらかじめ試験でも適用してほしいと申し出ておくべきでしょう。

C) コミュニケーション
あなたのコミュニケーション方法はなんですか?
手話通訳やノートテイクが必要な場合、事前に「これで受験したい」ということを伝えてください(あわせて、時間がかかるということ、そのために時間を長くしてほしいことも)。
また、「自分が相手の言いたいことが伝わるか」だけではなく、「相手に自分の言いたいことが伝わるか」にも注意してください。発音に問題がある場合、コミュニケーションの方法を変えなければいけないこともありえます。
 少なくとも、注意したほうがいいと思われるポイントでした。
 (また、CBT・OSCEでは受験費が必要ですが、大学が負担してくれるところと、個人で負担しなければいけないところがあるようです。滋賀医大は大学負担でした)。
 自分の持っている能力が生かせるように、少しふつうとはやり方を変えてもらわなければいけないことがあるかも、ということは覚えておいてください。

臨床前実習-5:前項|もくじ|次項:臨床病院実習-1
文責:Kumiko

臨床前実習-5

 いよいよ「臨床前実習」のお話も、この回で終わりとなりました。
 今回お話しする「外科的手技」と「心肺蘇生法」は、現場に出たときがこわいものです。
 この2つは、じつは現場に出たとき、聞こえない人にとっての脅威になってしまうことがあるんです。
 しかも、わたしもまだ答えの出せていない問題なんです。

 聴覚障害のある人、思い出してみてください。
 ・マスクで口が覆われると理解度が落ちる。
 ・とっさに言われたことに対応しにくい(聞き返す)。
 ・コミュニケーションに時間がかかる。
 ・何人かが話すような状況が苦手だ。
 心当たりがありませんか?
 そのことが「外科的手技」と「心配蘇生法」を、「現場で」やるときのネックになってしまうんです。
 ただし、「実習」という枠組みの中であれば、聞こえようが聞こえなかろうが、落ち着いてやればできるものでもあります。

【外科的手技】
 臨床前実習で行う「外科的手技」は、恐れるに足りません。
 (手術場で行うわけではないので、マスクをはずしてもらえますから)。
 具体的には、
 ・清潔操作:手洗い、ガウンの着方、手袋のはめ方
 ・傷口の処置:消毒、局所麻酔、縫合、結紮(けっさつ)、ドレッシング、抜糸
 ・処置で出たごみの処理:バイオハザードの理解
 以上です。
 これだけをやるなら、何も心配することはありません。
 落ち着いて、教官の説明をよく聞き、わからなければ質問をして、やってみることです。上のような技術自体は、聞こえには関係がありません。
 ところが、「手術場」に場所が変わると、そうはいきません。臨床実習のときに、それぞれの感じ方で理解することになると思いますが、いまのうちに先取りして言っちゃいましょう。
 ・マスクは外せない。
 ・音によって状況を把握しなければいけない。
 ・チームで手術を進めていく:このときは音声でコミュニケーションする。
 このことを、心に留めておいてください。

【心肺蘇生法】
 こちらも同じく、落ち着いてやればできることなんです。
 が、現場はあわただしいです。
 チーム医療ですから、チームリーダーが指示を出し、その指示にしたがってテキパキと動かなければなりません。
 これ、どうしましょう?
 わたしもまだ、「現場で」心肺蘇生をしたことがないんです。
 (救急車搬入!→すぐ静脈を確保して点滴、などということはありました)。

 これについては「今後の課題」にしましょう。
 どなたか、いいアイデアはありませんか。
 救急と手術からは身を置く、というのが賢明かもしれません。
 ほかの人って、どうしていたんでしょうね。これ。

臨床前実習-4:前項|もくじ|次項:CBT・OSCE
文責:Kumiko

臨床前実習-4

 今回は「打診」について説明します。
 そのほか、あまり耳を使わなくてすむ「視診」「触診」についても、聴覚障害のある人が気をつけるべきことを書いておきます。

【打診】
 「打診」という言葉は、「聴診」や「触診」ほどには耳慣れた言葉でないかもしれません。
 「打診」というのは、その名のとおり「打つ」ことで患者さんを診ます。
 胸とお腹で行うワザです。
 どういう仕組みかといいますと、人間の体の中には中が空っぽになっているところ(空っぽの胃や腸、何もない「腔」)と、みっちり詰まったところ(肝臓や脾臓)と、その中間くらいのところ(肺)があるわけです。だから、体を軽く叩いて、その音の異常をみるのが「打診」です。
 中の詰まったリンゴと、スカスカのリンゴを叩いて、どんな音がするか比べてみてください。違う音がする、とわかりますか?
 中身が詰まっていれば、にぶくて低い音(濁音)になります。「ドン」。打ったときも「手ごたえ」を感じます。
 中身が空っぽであれば、軽くて短い音(鼓音)になります。「ポン」。打ったときも手ごたえがなくて、軽やかな感じです。
 その中間で、空気を多く含む肺は、低いけれども澄んだ音(清音)がします。「トン」。

 打診をどういうときに使うかというと、主に「あるはずのないものがある」ことと、「痛みがないかどうか」を調べるために使います。
 前者の代表的なものの1つ目が、胸水や腹水。胸やお腹に水がたまっている状態です。普通は何もないところに水があるわけですから、叩いてみると音が違う、というわけ。
 2つ目が、臓器が大きくなっていたり、臓器にできものができている、という状態。にぶい音が聞こえる範囲が広くなっています。
 講義などでもやると思いますので、勉強ですヨ~。

 さて、「にぶい音」「軽い音」といっても、その違いがよくわからないのが「聞こえづらい人」。
 これは、「手ごたえ」のほうを感じることにしましょう。
 中身の詰まったものと、中身のないものを叩いた時の手ごたえって違うはずです。ためしに肝臓の上と、肺の上を打診して、手ごたえを比べてみてください。
 これも練習が必要です。
 (聞こえる人も、最初は打診の音を聴いて「う~ん…なんか違うような気がする」「自分でやるとよくわからないけど、先生がやるとはっきりわかる」なんて言っています)。
 臨床前実習のときは、叩く場所と、手ごたえを感じることに注意してみてください。

【視診・触診のときに気をつけたいこと】
 視診と触診は、それをやるだけなら耳を使いません。見て、触ればいいのですから。
 気をつけたいのは、「視ること」「触ること」にばかり注意を向けると、見落とす情報がある、ってことです。
 たとえば「お腹が痛い」という患者さんのお腹を触診します。ここで、触ることにだけ気を向けていると、患者さんが漏らした「イタッ」という小さな叫びに気づかないことがあります。
 だから必ず、顔・全体を見るようにします。
 患者さんの持っている情報は、「ことば」だけではありません。その様子や表情も、もうすでに立派な情報になります。そういうところをフルに生かして診られるようになれば、立派な医者になれるかも!?
 また、触ったり見るときに、痛みの有無や、違和感があるかどうかを確認しながら進めていくほうがいいかな、と思います。

 まだまだ前途多難!
 わたしの経験からお話しているので、気づいていないこともたくさんありそうです。
 参考になればいいのですが。
 ほかの人からのご意見もお待ちしております。
 次は、「外科的手技」と「心肺蘇生法」についてのことを。

臨床前実習-3:前項|もくじ|次項:臨床前実習-5
文責:Kumiko

臨床前実習-3

 さあ、佳境に入ってきました。
 今回から、ちょっと専門的なお話になってきます。

【聴診】
 医療の現場において、「聴覚障害があるためにやりづらいこと」というと、まず最初に挙がってくるのがこの「聴診」ではないでしょうか。
 聴診とは、人間の体内から発される音(生体音)を聴くことです。
 心臓や肺だけではなく、血管を血液が流れる音も聴きますし(血圧や血管雑音)、腸管が動いている音(腸蠕動音)も聴きます。
 人間の体って、いろんな音がするんですよ!

(1) 道具:聴診器・心音図
 体の中の音を聴くために、「聴診器」があります。
 ところが、聴覚障害を持つ人はこれがニガテ。
 難聴にも軽度から高度までいろいろな難聴がありますから、一概にはいえないのですけれども、高度難聴となると普通の聴診器では太刀打ちできません。
 (一度、学校の備品なり、生協や購買に置いてあったりする普通の聴診器で聴いてみてください。聴診器を叩いて音が聞こえなければ、役に立ちません)。
 そのような問題を解決するには、どうしたらいいでしょうか。
 方法は2つあります。
 A) 音を大きくできる聴診器(電子聴診器)を使う
 B) 音が目で見える形になるものを使う

 具体的にどんな機械なのかは、これまた長くなってしまうので、項を改めさせてください。

(2-1) 聴診の実際:聴診器編
 はじめにお伝えしたいことは、「聴診は、聞こえる人でも専門家になるまでは修行が必要だ」ってことです。専門家でも判断に悩むような音もあります。
 それをふまえて、「どう聴いたらいいの?」というギモンを、わたしなりにお答えしたいと思います。
 まず、普通の人と同じようにはぜったい聞こえません。
 ここ、重要です。聞こえかたが違う、というのを認識してください。
 その上で、わたしが聴診をするにあたって先生から受けたアドバイスは、
 「自分の聞こえかたで、正常の音とそうでない音を聞いて、覚えておくように
 ということでした。
 「自分の聞こえかた」でいいんです。
 でも、とにかく「聴く」こと。残っている聴力で聴くことのできる人は、それを活用して「自分が聞いたときの音の違い」を確かめながら聴診をしていけばいいと思います。
 ただし、先ほども書いたとおり、正常な聴力の人と同じようには聞こえません。100%の音を聞くことができないので、大事なことは聴診を補えるような視覚情報(心音図など)を用いるほうが安全です。特に、気管支・肺の音は聴診が重要な所見となることが多いです。

 聴診は難聴のある人にとって難関となりますが、大切なのは、「自分の耳でどういう音が聞こえて、その音はどんな意味を持つのか、正常なのか異常なのか」を理解しようとすることです。
始める前に:
音の高さ低さはわかりますか?
補聴器を使っていると、「音の高低」と「音の大小」が混同されがちのようです。「高い・低い」と「大きい・小さい」は違うんだ、ということ、わかるでしょうか。
ここが聴診のネックかもしれません。
生まれつき聞こえなかったり、小さいときから聞こえないという人は、「音の高低」の概念が理解しにくいようです。
難聴の中には、高音または低音のどちらかが障害されるタイプのものもあり、これもまた難しさの原因かも。
とにかく、自分で聴いてみてください。
「聴診器が使えるかどうか」の判断にはなります。
心音:
どの場所から音が聞こえるかに注意します。
「ドクッ」という低い音がI音(三尖弁・僧帽弁の閉鎖音)、
「トンッ」という軽くて高い音がII音(大動脈弁・肺動脈弁の閉鎖音)です。
I音は三尖弁・僧帽弁の音がよく聞こえる心尖部(左乳首の下あたり)で、II音は大動脈弁・肺動脈弁の音がよく聞こえる心基部(第2肋間で、胸骨の左右)で、それぞれよく聞こえます。
場所と音の関係、それから音の意味を理解すれば、ずいぶんと「聴きやすく」なりますよ。自分で、勉強してください(ガンバレ!)。
また、心音の場合は、心臓の弁の具合が悪いようなとき(「弁膜症」ですね)に、皮膚の上から「振戦 (スリル:thrill)」といって、音が振動になって触れます。
(弁は血管と心臓のドアのようなものですから、たてつけが悪くてガタガタしているんだ、と思ってください。ちょっと悪いくらいではそんなに揺れませんが、ひどくなると派手に「ガタガタッ!」)。
聴覚だけではなく、触覚でこの「振戦(thrill)」を感じとることに注意すれば、「音がわかる」と思えるでしょう。
肺音:
肺音は、心音よりもちょっと難しいかもしれません。
肺の音を聴くコツは、左右で差がないかどうか全体で差がないかどうか、です。自分の耳で聞いて、左と右で音が違っていたり、ある場所だけ音が弱かったら、それはやっぱり「なんだかおかしい」ということです。
もうひとつコツがあって、「胸郭(胸)の動きを見る」ということです。吸気と呼気のどちらで音が聞こえるか、ということが重要です。
(でも、けっこうムズカシイんですよね、これが……)。
次に、気管支音肺胞呼吸音の区別をしましょう。
「気管支音」は気管支の音ですから、体の中心のほうで聞こえます。高い音で、吸気・呼気の全体で聞こえますが、呼気のほうで強く聞こえます。「スゥーハァー
「肺胞呼吸音」は肺胞の音なので、体の外側のほうで聞こえます。肺のはしっこのほうをイメージしてください。この音は吸気のときと、呼気のはじめにしか聞こえません。「スゥー……スゥー……」
これが基本です。その他の「ラ音(気道から聞こえる異常な音)」などについては、自分で勉強してください。わたしも勉強中です。
腸蠕動音:
よく、下痢をしているときにお腹が「ゴロゴロ」「グルグル」と低~く鳴りますが、あの音です。
10秒から30秒くらい聴いてみて、1回か2回「ゴロゴロ」「ゴロゴロ」と聞こえるのが正常です。音がすることがわかればOK。
このくらいの時間聞いていてもまったく音がしなければ、「減弱」「消失」と判断します。
10秒から30秒くらい、間隔をあけるのではなくずっと「ゴロゴロゴロゴロゴロ」と音が鳴りっぱなしなら「亢進」です。
その他、ふつうは低い音のはずなのに、高い音(金属音)が聞こえたら、それは異常です。
血圧:
よく考えたらこれ、「生理学実習」でもやったような気がします。
聞こえづらい人のばあい、まず「触診法」からやりましょう。
触診法だけでも収縮期血圧がわかります。
その血圧をめやすにして聴診法で血圧を測ると、聴いてもわかりやすいでしょう。
血管雑音:
これは、音がしたらオカシイです!
(音がしているのに聞こえなかった、ということもあるので難しいのですが)。
あて方や、あてる場所によってけっこう聞こえかたが違ってくるので、いろいろ工夫の余地があるかも。
 聴診器をあてる場所や、あて方は実習の中でじっさいに学んでください。

(2-1) 聴診の実際:心音図編

 「心音図」というものがあります。
 心音図にとどまらず、音というものは「波(波動)」なので、その波動を目に見える形で表すことができます。
 小学校の理科で、音の大小や高低によって変わる波の図を見たことがありませんか。原理はそれと同じで、その波の形を詳細に分析することで「どんな音が体の中からしているのか」を調べることができます。

 帝京大学の中木先生から、大石くんが大学で使用している聴診器と、その音を解析するソフト、そのソフトを入れたPDAの情報を頂きました。
 詳細はこちらです(英語)。
 Cardionics:E-Scope Electronic Stethoscope

 以上のように、音は目で見える形に表すことができるので、その情報を最大限活用していくことが、安全でかつ臨床の現場でも活用できるものと思います。
 血圧を測る場合、電子血圧計なども使えますね。
 心臓は、心音を聴くまでもなく、いまは持ち運びのできるエコーの機械があり、それで弁の動きや心房・心室の大きさを見ることができます。
 技術がどんどん進歩してきているので、目で見て確実にわかる機械の開発も、促していきたいところです。

 正直な話、臨床前実習の段階では「聴診器をあてる場所さえわかっていればいいや~」みたいな感じで、なんとかなっちゃう場合もあるんですよね。
 でも、病院に行けば意外と聴診をします。
 しかし、無理をすることはありません。自分にとって聴診器が使えないと思ったら、それ以外の方法を考えていってください。無理をして間違ったことを言うより、確実にできることのほうを選ぶべきです。そういう意味でも、自分にとって「使える」ツールを模索していくのが大事かと思います。

臨床前実習-2:前項|もくじ|次項:臨床前実習-4
文責:Kumiko

臨床前実習-2

 聴覚障害があることで「医療面接(問診)」「聴診」「打診」「外科的手技」に問題がありそうだ、というところで前回は終わりました。
 次に、「どうして問題なのか」「問題に対処するには」ということを、4つのそれぞれについて解説しましょう。
 覚えておいてほしいのは、「人と同じようにできないことがあるかもしれないけれど、無理に人と同じようにする必要はないし、自分にあったやり方を見つければよい」ということです。ここで書いていることは、あくまでも「参考」にしてください。行動するのは、自分自身です。

【医療面接(問診)】
 「医療面接」と「問診」の違いはなんでしょうか。
 その基本は「病気を診るか、人を診るか」ということにあって、
問診:従来行われてきたもので、病気の診断に必要な情報だけを集める。
医療面接:患者さんとの信頼関係を作り、病気の診断に終始しない。
 ということになります。
 じっさい「医療面接」ができているかどうかは、コメントを控えさせてください(難しいね~)。「医療面接の技術」にはいろいろなものがあるのですが、これは講義でも学びますし、専門の本もあるくらいなので割愛します。

 さて、問診にしろ医療面接にしろ、生身の人間が相手になってきます。患者さんとのやりとりにおいては、会話すること、コミュニケーションすることが中心になってきます。まさに「医者と患者のコミュニケーション」の中核が「医療面接」にあるといっていいでしょう。
 ところが、ずばり聴覚障害を持っていると、「音声を介したコミュニケーション」が、程度の差はあっても普通に聞こえる人よりは苦手な傾向にあります。
 「何度も聞き返して嫌がられないだろうか」
 「患者さんの言っていることがわかるだろうか」
 ――「コミュニケーション」に関する悩みは尽きません。
 おそらく、わたしを含めてこれから医者になろうとする聴覚障害者にとって、最大の課題が「コミュニケーション」でしょう。逆に言えば、自分なりのコミュニケーションができると、働き方がぐっと広がるはずです。

 聴覚障害をもつ人が、医学生として「医療面接」を行うときのポイントは3つあります。
 (長いですよ!覚悟してください)。

(1) 自己紹介を丁寧にする
 「医療面接」では、「自分の名前を名乗り、患者さんのお名前を確認する」ということをふつうでもやります。通常は「医学科○年生の○○と申します」「研修医の○○と申します」で終わることが多いです。
 聴覚障害を持っている人の場合は、名前を名乗るだけではいけません。
 「患者さんに安心して受診していただくために、こちらの情報を提供する
 これを意識して医療面接をはじめます。
 具体的には
A. 耳が聞こえづらいことを説明する。
B. 自分のコミュニケーション手段を説明する。
 (読唇する、聞き返すことがある、紙に書いてもらうかも、手話通訳、など)。
C.そのため、時間がかかるかもしれないこと。
 この3つをおさえておきたいところです。
(例)「医学科○年生の○○と申します。今日は先生に診察を受けていただく前に、お話を伺いますね。その前に、わたしは耳が聞こえづらくて、口の動きを見ています。聞き返したり、紙に書いてもらうこともあるかもしれません。ちょっとお時間がかかってしまいますが、それでもよろしいでしょうか?」

 本当は聞こえの程度に関わらず、「あなたを診察するのはこんな医者なんですよ」ということがわかれば、まったく知らない誰か(医者)に診てもらうよりは、患者さんも安心できる…かもしれません。「聴覚障害があるからこうしなければいけない」のではなくて、「患者さんの信頼を得るために、自分の情報を提供する」ということを意識するほうがいいと思います。

■注意:例外がある!
 実習の際にはあまり考えなくていいことですが、実際の現場では緊急の事態であるとか、患者さんが終末期(ターミナル)の状態であるときには、「自己紹介を丁寧にする」ということが通用しないこともあります。
 たとえばターミナルの患者さんやご家族に、聴覚障害を持っていると告げることで、ただでさえ気苦労の日々であるのにこちらにまで気を遣わせてしまうということはありうる事態です。
 わたしも、実際にターミナルの患者さんの前では、自己紹介することができなかったことがありました。わからなければ、ただもう一度仰ってくださいと伝えました。
 また、緊急時には当然、丁寧に自己紹介しているヒマはありません。
 自己紹介するかしないか、というのは周囲の状況や患者さんの状態を見きわめてやらなければいけない、ということに注意してください。

(2) 自分のやり方で話を理解する・内容を確認する
 「自分のやり方で」ということが肝心です。
 手話通訳を使っても、ノートテイクを使っても、聞き返したり紙に書いてもらったりしてもいいのです。そうするのがいやだ、という患者さんは、ほかの人にお話を聞いてもらうことにします(周囲への根回しは忘れずに!)。いままでわたしが「耳が聞こえづらいんです」と言って、お話を聞かせてもらえなかったことはありませんが、念のため。
 自分のやり方でやることで、時間がかかってしまうことも大いにありえます。緊急度の高いときは使えない方法ですが、そうでない場合は時間をかけてきちんと聞く、ということを意識してください。
 いちばん怖いのは、「あやふやなままにしておいて、それが重要な情報だったとき」です。
 たとえば患者さんが、何かのお薬にアレルギーを持っているとしましょう。お薬の名前がよく聞き取れないとき、たぶんこうだ、という予測をしてはいけません。必ず確認します。書いてもらうなり、もう一度言うなり、自分でお薬の名前を書いてみせて確認を取ったり、やり方はあります。
 ひととおり聴きおわったら、メモを見せるなどして「こうですか?」「足りないところはありますか?」と伺うといいですね。
 これも、普通でも重要なことなのですが、残念ながら「時間がない」などの理由でおろそかになっていることも。医者の人数が足りていない、などの問題もあるのですが……。う~ん。

(3) 相手に自分の言葉が伝わっているか?
 聴覚障害のある人は、場合によっては「相手に自分の言葉を伝える手段」も考えなくてはなりません。特に、子供のころから高度の難聴があると、自分が発している「ことば」を自分で認識できずに発音が不明瞭になっていることが多いのです。
 もし、あなたが口話を使っているなら、患者さんに前もって
 「わたしの言葉がわかりにくかったら、仰ってください」
 などと、説明をしておいたほうがいいでしょう。
 あるいは手話通訳を介して、伝えてもらうこともあるでしょう。
 いずれにせよ、相手の言葉を理解するだけではなく、相手に自分の言葉を理解してもらわないといけません。

 この3つのポイントをおさえて、「医療面接」の実習を行います。たいていは学生どうしが医者役・患者役にわかれてやるか、「模擬患者さん」と実習するか、になるはずです。
 いってしまえば「医療面接の実習」は本当の患者さんを相手にするわけではなく、「ごっこ」になってしまうのですが、実習のときから上のことを頭において臨むほうが有意義だと感じました。
 すぐに、本当の患者さんを相手にした医療面接をしなければならなくなります。

 しかし、ほんとに長いですねー。
 息切れしていませんか、だいじょうぶですか?
 「患者さんとコミュニケーションする」ということは、医者人生を通しての大きな課題でしょう。わたしも、まだまだ全然できていないことだらけです。ぼそぼそと喋る患者さんと出会ったときは、正直どうしようかと思いました。
 けれども「自己紹介する・確認する」ことは、すぐにできますから、参考にしてみてください。
 次は、これまた難関の「聴診」です。

臨床前実習-1:前項|もくじ|次項:臨床前実習-3
文責:Kumiko

臨床前実習-1

 「専門教育課程-3」で、実習についてのことをお話しました。
 そのなかで、「臨床前実習」についてだけは触れていなかったので、あらためてこちらで書いていきます。

 まず、臨床前実習とは実際に病院で実習をする前に、基礎的な手技を学ぶための実習です。つまり、診察の方法をここで学んでいくわけですね。

 はじめて病院に行ったとき、お医者さんはまずあなたの症状について尋ねます。いつからその症状が出たのか?どこが痛むのか?何をしたら症状が出るか……など。これを「問診」といいます。最近では、単に病気が何かを見つけるための「問診」ではなく、患者さん全体と向き合おうとする「医療面接」という言葉も用いられています(ビミョ~に違うんですが、混じって使われることも。医学教育の上では、「医療面接」をしましょう、ということになっています)。
 次に、体がどんな具合なのかを調べるための診察をします。
 それにはおおまかに下の4つの方法があり、上から順に行っていきます。
視診:外から見てわかるものを調べる。
聴診:聴診器で胸やお腹の音を聴く。
打診:胸やお腹を叩いて、音を聴いたり痛みがないかを調べる。
触診:触ることで痛みや硬さを調べる。
 また、けがをして傷口を縫った、とか、もちろん手術もお医者さんの仕事です。そのための基本的な技術を「外科的手技」で学びます。
 さらに、「脈がない!息をしていない!」という人を救うための「心肺蘇生法」も学びます。自動車の運転免許を取った人なら、そのときにやったでしょうか。
 ということで、「医療面接(問診)」「視診」「聴診」「打診」「触診」「外科的手技」「心肺蘇生法」のやり方をこの実習ではやるわけですね。
 実際、どんなふうに実習していくかといいますと、 
1. 「医療面接
2. 視・聴・打・触診:「頭頸部」「胸部」「腹部」「神経系」のカテゴリごと
3. 「外科的手技
4. 「心肺蘇生法
 上で太字になっている部分ごとに実習することが多いようです。

 さて、だいたいどのようなことをするのか、大まかにわかっていただけたでしょうか?
 「医療面接(問診)」「視診」「聴診」「打診」「触診」「外科的手技」「心肺蘇生法」をやる、ということをわかっていれば大丈夫です。
 この中で、視診」と「触診」は耳に頼らないでできます。
 (患者さんが「痛い!」と言ったりするとき、それに反応が遅れる……なんてこともあるのですが、やるだけならできます。ほかの人より多少注意深く患者さんの表情や様子を見ましょう)。
 問題は、「医療面接(問診)」「聴診」「打診」「外科的手技」「心肺蘇生法」です。
 問題となるそれぞれについて、順番に解説をしていきましょう。
 長くなるので、項を改めます。

専門教育課程-4:前項|もくじ|次項:臨床前実習-2
文責:Kumiko

4月23日(Kumiko)

 4月に入ってから、更新が多くなりました。自分でも、びっくり。
 さすがに6年生になって、「いま書かないと一生書けないんじゃなかろうか」と焦りが出てきたのでしょう。――そういえば、6年生になったのでした。卒業したらどうしましょう。
 滋賀医大の6年生は春休みがなくて、今日から2週間、やっとお休みになりました。たぶん更新も増えるでしょう、「カテゴリ」のところ(とくに「教育支援」と「聴覚障害について」)をチェックしてみてください。

 ところで、わたし自身が「思いこんだら一直線」みたいな、まさに亥年生まれ!という猪突猛進なところがあるので、書いている記事に間違っているところがあるかもと、びびっています。
 まだ経験も知識も少ないですから、どうぞみなさんの意見を聞かせてください。

 この「つぶやき」カテゴリでは、とくにテーマにこだわらずに書いていこうと思っています。
 そして、他のメンバーの人にも「つぶやいて」ほしいなとコッソリ思っているわけなんですが、書いてみませんか?(たとえば「つぶやき」にでも!>AYAKAちゃんあたり)
 いま、残念ながらわたし(Kumiko)しか書いていないので、メンバーで協力して後に残るものを作れないか?と考えています。

 さらに、メンバーを募集しています。
 顔写真とか、在籍する大学とか、出したくなければもちろん出しません。
 みなさま、よろしくお願いしますね。

文責:Kumiko

よくあるシーン(もくじ)

【よくあるシーン:もくじ】
 長くなってしまったので、「もくじ」を載せました。
 下のリンクをクリックしてお読みください。
よくあるシーン:問題提示
よくあるシーン-考察1:はじめに
よくあるシーン-考察2:Bさんの問題
よくあるシーン-考察3:Aさんの問題
よくあるシーン-考察4:おわりに

よくあるシーン-考察4

【考察:おわりに】
 Aさんの問題、Bさんの問題、とわけて考えてきました。
 繰り返しますが「はじめに」でも言ったとおり、問題はつきつめれば
 「相手がどういう立場なのかを考えていない
 ということなんじゃないか?
 ――と、わたしはみなさんに問いかけたいです。

 これは、聴覚障害があってもなくても、どんな人でも、本当はそれを考えることからはじまるはずなんです。聞こえる人どうしでも、日本語を使っていても、「会話が成立していない」ことはあるんじゃないでしょうか。
 (残念ながら、「医者と患者の会話が微妙にズレている」というシーンもよくあることです。専門用語で説明するお医者さん、うなずいているけれどもわかっていない感じの患者さん、こんな風景をよく見かけます)。
 とくに、「コミュニケーション障害」のひとつである「聴覚障害」では、「どうやったらコミュニケーションできるか」を考えることが大事だし、聴覚障害のある人自身もそれを考えていかなければいけません。

 ところで、最近は学校教育のなかで「聴覚障害」についての話もでてきているのでしょうか。西瓜さんから下のようなコメントをいただきました。
西瓜さんからのコメント:
> 中には理解してくれている人がいます。
> 初めて会ったにも関わらず、
> 声の大きさとかゆっくり喋ってくれるとか口の大きさとか紙に書いてくれるなど、
> 耳が聴こえない人との関わり方を知っている人がいます。
> 手話ができる人もいました!(残念なことに私は手話の知識が全くありません)
> 彼らはそう親にしつけられていたり、
> 学校の道徳の授業や先生によって学んでいたのです。
(中略)
> みんなは学生時代に必ずそのような授業で学んでいます。
> だから、赤の信号を渡ってはいけないという風に
> 常識な事だと理解している人が多いです。
 すごい!わたしの小学校・中学校時代はそのようなことはなかったな、と記憶しています。
 これはステキなことで、自然に「どうしたらいいかを考えて、実行できている」人がいることをうれしく思いました。
 ひとつだけ注意したいのは、「常識」だと思うのは危ないよ、ということです。
 一律に、「○○ならこうすればいい」という思い込みが間違いのもとになっていることが、けっこうあるんです。
 (Bさんも、「耳が聞こえないなら声を大きくすればいい」と思っていますよね。そして、それは違うと感じている人がいます)。
 ある程度の教育とそれに基づいた理解は必要で、それによって適切な対応が選択できる、というのはあるはずですが、「常識だから」と思い込まないでください。

 また、じつはコメントのなかに「それは誤解ですよ」という部分がありました。
お名前のない方からのコメント:
> 殆(ほとん)どの聴覚障害者は口を読み取って会話をするので、
> 口が読み取れるような口の形にしてもらうことが大事なのだと思います。

熊さんからのコメント:
> 聴覚障害者は口読むからやっぱり口の大きさが大事かな…
> 声の大きさは小さくなければ問題はないと思います。
 子供のころからの難聴がある人にとって、「読唇(くちびるの動きを読む)」はコミュニケーションのための手段です。
 ずっと難聴がある状態できた人自身が、よく誤解するのがここ。
 すべての聴覚障害者が唇を読めるわけではありません!
 年をとってから聞こえなくなったとしましょう。
 その年までふつうに聞いていたのに、いきなり唇が読めるようにはならないんですよ。いわゆる、中途失聴の人たちは、唇の動きを読めないことも多いです。

 このように、聴覚障害を持っている人自身でも誤解していることがあるのではないでしょうか?
 ほかにもあります。生まれつき聞こえが悪く、手話を「ことば」として選んできた人たち――「ろう」の人たちは、筆談の苦手な人も多くいるようです。
 これは、わたしも大学に入ってから学んだことでした。

 「聞こえなければ○○すればいい」という思い込みを捨てて、「あなたとコミュニケーションしたいのだけど、どうすればいいんだろう?」と考えるところからはじめてみませんか。
 「どうやったら伝わるか」
 「相手にとってわかりやすいのはどういう伝え方か」
 そこが出発点だ、と思います。

 それをふまえて、「聴覚障害ってなんだ?」ということについて、これから一緒に考えていきましょう。
 ご質問のあった「老人性難聴は医学的にどういうことか?」についても、書いていきます。

 長くなってしまいました。「よくあるシーン」に関する考察は、ここで一応の終わりにしましょう。でも、ここからが本当のスタートです。
 最後になってしまいましたが、考察のなかにコメントを引用させていただきました。コメントの引用がいやだという方がいらっしゃいましたら、申し出てください。

考察3:前項|もくじ
文責:Kumiko

よくあるシーン-考察3

【Aさん:子供のころから高度難聴】
 つぎに、Aさんの問題です。
 Aさんは、どうしたらコミュニケーションしやすいか、伝えることができていません。
東山さんからのコメント:
> Aさんの問題は、自分の聞こえ方についてうまく説明できていないこと。
> (もしくは、自分でもよくわかっていないこと。)
 そうなんです、Aさんは自分の聞こえという問題を、自分自身のことなのによくわかっていないんです。
 「聞こえなければ声を大きくすればいい」と思っているBさんに困惑するだけで、自分から「こうすればいいんですよ」と説明ができていない。
 相手の「よくわからない」というところを考えるなら、それに対して「自分はこうなんです」と説明することが必要です。
 これも、「聞こえている人」の立場をわかっていないために、生じてくることではないでしょうか。とくに小さいころからの難聴がある人は、「聞こえないことがあたりまえ」の世界で育ってきたので、自分についてうまく説明できないことが多いようです。

 これについては、みなさんから「どう説明したらいいのかわからない」Aさんへ、いいアドバイスがありました。3人の方からのコメントをご紹介します。
nagomamaさんからのコメント:
> 私は健聴者です。もし私がAさんでしたら、
> 「わたし、耳が聞こえにくくて。補聴器を使っているんです。
> 大きくしたら聞こえるというわけではないんですけど」
> と話すと思いますね
> 実際、息子が高度難聴なんですが、まずこう言ってます。
> そして相手がBさんのように、
> 「(声を大きめにして)このくらいでい?」と言ってくれるような時は、
> 引き続き感音性難聴について説明します&
> 息子の場合は補聴器をしてもかなりシビアな聴力なので、
> 手話が出来る事や口話を勉強していることを、こちらから話しますね
西瓜さんからのコメント:
> 私は難聴の高校生ですが、そのような状況はよくあります!!
> 私の学生の体験ですが、学校で新しく作る友達には
> 「私、耳悪いけど、まぁ、なかよくしてね」と言っています。
(中略)
> もし相手が理解していなかったら、
> 相手に耳が聴こえない事の大変さを知ってもらいます。
東山さんからのコメント:
> 私がこのような場面になったとき、
> どのように説明するかといいますと…
> まず難聴の種類について説明します。
(中略)
> さらにこの聴覚障害独特の感覚を分かりやすく
> イメージ出来る様に「視覚」に例えます。
 みなさん、それぞれ「どう伝えるか」を考えてくださっています。東山さんの「視覚に例える」というのは面白いので、またあらためて「どうやって伝えるか?」をお話しましょう。

 またまた、コメントからの引用です。
西瓜さんからのコメント:
> やっぱり人はコミュニケーションが欠かせないです!!
> 耳が悪い人だけでなく健聴者にもあてはまるけど、
> 人は会話しなくなるほどdumb(物が言えない、口がきけない)になります。
> 相手の言ったことを理解するために、お互いに会話するために、
> こういう状況はちゃんと伝えなければならないといけない
 ってことですね。
 Aさんはそのことを理解していない、というのが問題でした。

 なかなかムズカシイ話でしたが、「自分を知り、相手を知る」ということを、みんなで考えていきましょう。
 Aさんの問題についてのお話は、これで終わりです。

考察2:前項|もくじ|次項:考察4
文責:Kumiko

よくあるシーン-考察2

【Bさん:健聴の若い人】
 最初にBさんの問題です。
 (あれっ、と思った人、ご心配なく。Aさんの問題はあとでお話します)。
 Bさんは、「聞こえなかったら声を大きくすればいい」と思っています。
 けれども、(感音性)難聴をもつ人の多くが、これが間違いであるとすぐ気づいたでしょう。
 コメントから引用させていただくと、
お名前のない方からのコメント:
> 「音」は聴こえるのですが、その音の種類がはっきりわからないから、
> 声を大きくしてもその声が普通の雑音と変わらないことがあります。
> だから音の大きさとかが問題ではないです。

東山さんからのコメント:

> 「音」が聞こえることと、その「音」を認識することはまた別の話です。
 そうそう、その通りなんです。
 単純に声を大きくすれば、聞こえるってもんでもないところが、ムズカシイところ。
 (「なんでそうなるのか?」ということも、また書いていきます)。

 でもね、ここで注意してほしいことがひとつ。
 「聴覚障害」って、いろいろあるんです。
 「聞こえづらい、聞こえが悪い」というとき、みんながが同じように感じているわけではありません。
 これを読まれているそこのあなた、あなたの聞こえに問題があってもなくても、
聞こえかたは人によって違いがある。
どうやってコミュニケーションすればいいかも人それぞれ。
 ということをまずは心にとめておいてください。
 (「どんな聴覚障害があるか」「どうやったらコミュニケーションしやすいか」について書こうと思うと、とても長くなってしまうので、これまた項を改めてお話しましょう)。

 それではBさんの問題についてまとめましょう。 
東山さんからのコメント:
> Bさんに対して(の問題)は、
> 声を大きくしたら話がわかる難聴(伝音性難聴、老人性難聴)と
> 声を大きくしても話が分からないことがある難聴(感音性難聴)が
> あることを知らないこと。
 うん、そうですね。
 でも、「普通は大抵知らないですよね」ともコメントしてくださっているとおり、普通は知らないものです。
 では何が問題か?
 それは「はじめに」でも書いたとおり、
 「相手がどういう立場なのかを考えていない
 ってことなんじゃないかとわたしは思います。
 「相手とどう会話したら、会話ができるか?」というのは大切なことなんですが、どうも普通はそれを考えなくても会話ができてしまうので、忘れられやすいようです。
 さきほど、「聞こえかたは人それぞれ」「どうやってコミュニケーションすればいいかも人それぞれ」と言いました。
 Bさんは「聞こえなければ声を大きくすればいい」と一律に考えてしまっているけれども、そういう「思い込み」がやっかいなのです。その思い込みがBさんの問題。

 難聴の種類や、どうコミュニケーションすればいいかは、知っていればコミュニケーションがやりやすくなるけれども、知らないことも多いものです。
 それを知らなくても、「相手とコミュニケーションするにはどうしたらいいか」を考えてみることで、まずは一歩前進できるはず。
 これは難聴を持つ人自身にもいえることで、「自分はこうだから、相手もこうだろう」という思い込みはとってもキケンです。

 Bさんの問題についてのお話は、いったんこれで終わり。
 次はAさんの問題についてのほうをお話します。

考察1:前項|もくじ|次項:考察3
文責:Kumiko

よくあるシーン-考察1

【考察:はじめに】
A:「わたし、耳が聞こえにくくて。補聴器を使っているんです」
B:「(声を大きめにして)このくらいでいい?」
A:「いえ、大きくしたら聞こえるというわけではないんです」
B:「どれくらい聞こえているの?」
A:「えーと……(説明に困る)」
 「よくあるシーン」で、上のような状況を提示しました。
 それに対してコメントをくださったみなさま、どうもありがとうございます。
 今回は、なにが問題なのかをAさんとBさんの両方から考えてみるとともに、いただいたご意見についての回答もさせていただこうと思います。

 まず、なにが問題なのでしょうか?

 最初にわたしの考えを1つ、簡単ですが出します。
 AさんとBさん、両方にいえる問題なのですが、
 「相手がどういう立場なのかを考えていない
 ということだと思っています。

 はじめに、AさんとBさんの問題に分けて考えることを提示しました。
 「相手がどういう立場なのかを考えていない」というのが、おおもとの問題であるにしても、それだけではボンヤリしすぎていてよくわかりませんよね。そこで、「どう問題なのか?」をAさんとBさんにわけて考えてみましょう。
 長くなるので、今回の「はじめに」と、AさんBさんそれぞれの問題点、それから最後のまとめの計4回を「考察1~4」としてお話します。

よくあるシーン:前項|もくじ|次項:考察2
文責:Kumiko

専門教育課程-4

 最近は「少人数能動学習(チュートリアル教育)」をプログラムに取り入れる大学が多くなってきました。「少人数能動学習」または「チュートリアル教育」という言葉、聞いたことはあるでしょうか?わたしはお恥ずかしいことに、入学する前まで知りませんでした。
 少人数能動学習(チュートリアル教育)では、4人から7人程度のグループで「グループ学習」をします。
 きめられた科目において、その科目に関連する課題・問題が出され、課題について問題点を抽出することからはじまります。問題点についてグループで協力して調べ、議論し、自学自習・相互学習していく、という形式で進みます。
 また、ひとつのグループにつき1人のチューター(指導教官)がおり、知識面での不足や学生が気づいていないことをアドバイスしてくれます。
 細かいことは大学によって違いがありますので、それはご自身で調べてください。今は大学のホームページで閲覧できるようになっています。
 (キーワードは「チュートリアル 医学部」)。
 専門教育課程のなかでも、特に臨床医学の科目について行われることが多いですが、筑波大学医学学群のように基礎医学の科目でも少人数能動学習を行っているところがあります。

 さて、こういった少人数能動学習(チュートリアル教育)ですが、聴覚障害のある人にとって問題があることがわかってきました。
 前回の「専門教育課程-3」のうち、【その他の実習】の [3. 資料を調べたり議論する] の項目で書いたことと、問題点は同じです。
 つまり、「数人で議論する」というシーンがあまり得意ではないための問題です。

 何が問題なのでしょうか?
 まず、議論をするというのは、何人かの人が意見をかわしあうということです。
 何人かの人が意見を出しあうとき、あちらこちらで声がするという状況になるでしょう。
 聴覚障害のある人は、たとえばある程度聞こえるような人でも、読唇をする人でも、あちこちで喋られると議論の流れについていくことが難しくなってしまいます。特に議論のスピードが早くなると、取り残されてしまうこともしばしば。
 解決するためには、グループのみんなの協力が必要になってきます。
 具体的には、[3. 資料を調べたり議論する] の項目で書いたこととほぼ同じになりますが、
・書記をひとり決めてもらう:紙やホワイトボードに要点を書く
 (聴覚障害のある人はそれを見られる位置に座る)。
・FMシステムの利用:発言者はマイクを持って喋る
といった方法があると思います。
 手話通訳などの通訳を利用するにしても、「ひとりひとり、発言者を明確にして話す」ことが必要になってきますので、他のグループよりも時間がかかってしまうことになるかもしれません。
 けれども、繰り返しになりますが、他のメンバーに協力してもらうことが必要です。時間はかかるけれども確実に勉強をしよう、という方向にもっていけるといいですね。

 関西医科大学では→「教育支援:関西医大|チュートリアル

 次は「臨床前実習」について、お話します。

専門教育課程-3:前項|もくじ|次項:臨床前実習-1
文責:Kumiko

専門教育課程-3

 専門教育課程では、講義を受けるだけではなく実習をすることによって学んでいくことになります。どういうものがあるか、というと、代表的なものが解剖実習
 他にも、組織学、生理学、生化学、感染症学、薬理学、病理学、社会医学それぞれに実習があります。
 実習について共通していることは、「事前にどのような内容の実習をするのかを知る」ということです。聴覚障害のある人は、情報を視覚で補わなければいけません。
 滋賀医大では実習の手引きや、読んでおくべきテキストが事前に用意・指定されているのでこの点に関しては問題ありません。
 もしそうでなければ、大学と事前に話し合いをして、どのような内容の実習をするのかや、実習にあたっての危険や注意点を前もって記載したものを準備していただけるようにしたほうが良いです。
 また、実習のなかには注射器を扱うもの、薬品を扱うものもあります。
 事前にテキストなり資料なりを読み、自分で注意しておくのが一番なのですが、それでも万が一のことが起こる可能性はあります。そのとき、どうやって知らせるか。これは、各個人の聴力の状況やコミュニケーション手段によって違いますが、距離が離れていなければ「肩をたたいてもらう」という方法が現実的だと思います。

 次に、解剖実習とその他の実習にわけて、その内容と対策をご紹介しましょう。
【解剖実習】
[1. どんなことをするの?:概要]
 最初に、解剖実習のナカミを少し説明しましょう。
 解剖実習では、2人から5人程度のグループで1体のご遺体を解剖させていただくことになります。
 ここで解剖する「ご遺体」は、「教育に役立てて欲しい」という気持ちで生前に「献体」の意思を大学などの教育機関に申し出られた方のご遺体です。
 ですから、ご遺体には限りがあり、そういった事情でグループの人数は変動することになると思います。
 だいたい胸部から解剖をはじめ、腹部、四肢、頭頸部の順に解剖していきます。臓器はもとより皮膚、血管や神経、筋肉、脳脊髄、骨(関節)の構造などを理解できるようにすべての部位を解剖することになります。

[2. 解剖に入る前に:準備]
 さて、解剖に入る前には準備をしなくてはいけません。
 これも微妙に大学によって違うみたいで、一概にはいえないのですが、共通しているものを挙げておきます。
 ・解剖用具:メスや鑷子(ピンセット)、剪刀(ハサミ)。
 ・マスク:これが聴覚障害のある人にとっての難関!
 ・キャップ:髪の毛をまとめておきます。
 ・手袋:ゴムやラテックス(アレルギーのある人注意)。
 ・ガウン:大学で解剖用の服の指定があります。
 また、ご遺体はホルマリンにより保存されていますので、解剖中はホルマリンのにおいと戦わなくてはなりません。たまにホルマリンアレルギーの人がいるので、注意してください。ホルマリンは揮発性(蒸発しやすく、普通の状態でどんどん蒸発する)で、また刺激物質なので目にしみます。そのためメガネやゴーグルをすることもあるでしょう。過敏な人は気をつけて。

[3. 聴覚障害のある人にとっての解剖:実際]
 さきほど準備の項でも述べましたが、解剖では「マスク」をします。
 さあ、大変なのはここ。
 聞こえに問題のある人にとっては、「マスクなどで口が見えない状態になると、話の内容が理解しにくい」のはよくあることだと思います。
 しかし、解剖のときはマスクをしてやることが普通です。
 外科手術とは違い、マスクが必須なわけではありませんから、はずしていただくこともできるでしょう。
 大学によっては、「口述試験」が課せられるときがあり、そのときにマスクをされていると、試験問題が聞き取りにくいことがあります。また、先生からの注意・伝達事項も口頭で伝えられることが少なくありません。
 そこで、用意しておきたいものがあります。
 「筆談セット:汚れてもいいペンとノート
 もちろん「ホワイトボードとマーカー」や、「かきポンくん」のようなものでもかまいません。筆談できるものを用意して解剖に臨んだほうが、確実に情報を得られるはずです。注意したいのは、それらの筆談用物品は間違いなく「解剖専用」になってしまうということ。汚れるし、においが取れません。そのことを考えると、安いペンとノートが現実的かと思います。
 最初にグループのメンバーと、解剖の先生方に協力をお願いしに行くことも大切です。
 手話のできる人であれば、手話通訳をたてることもできるかもしれません。ただし、解剖はおよそ半年近くかけてやることが多く、また毎日のようにすることもあります。その割に作業だけして喋らないシーンもたくさんあるので、「通訳」はあまり効率的ではないかもしれません。もしつけるならば、費用などの面で大学と相談が必要でしょう。
【その他の実習】
 解剖のほかに組織学や生理学などの実習があります。
 大きく4種類にわけられます。
[1. 顕微鏡をのぞいてスケッチする]
 組織学・病理学の実習がこれにあたります。
 感染症学(細菌や真菌)の一部、法医学の一部でも行います。
 組織のプレパラートを見てひたすらスケッチするだけなので、注意事項の伝達のほかは聴覚障害があるために困ることはあまりありません。

[2. 実習の手引きに沿って実験を行う]
 生理学・生化学・薬理学・感染症学・放射線学・法医学などがこれにあたります。実習の手引きが最初に用意され、何人かのグループ単位で実験をしていきます。
 内容はバリエーションに富んでいますが、マスクはあまりすることがないので、グループメンバーと協力すれば大丈夫です。

[3. 資料を調べたり議論する]
これは社会医学(公衆衛生など)の実習で見られる形式です。
 グループ単位でひとつのテーマについて調査し、そのことについて意見を出し合って、最終的にレポートをまとめるか、学年全体の発表会で発表する、という形になります。
 ここでは「議論」がくせもの。
 聴覚障害のある人は、「何人かが意見を次から次に出し合う」という状態があまり得意ではありません
 読唇をしている人は特に、意見を言っている人のほうを向かなければならず、議論のスピードが早いと議論についていけなくなります。
 そのため、ここでもグループメンバーの協力が重要になってくるでしょう。
 ・書記をひとり決めてもらう:紙やホワイトボードに要点を書く
  (聴覚障害のある人はそれを見られる位置に座る)。
 ・FMシステムの利用:発言者はマイクを持って喋る
 他のグループより時間がかかるかもしれません。でも、実習に参加するために必要なことだと、みんなに説明してください。

[4. 臨床前実習]
 これは実際に臨床の現場で実習を始める前に、基礎的な手技を学ぶための実習です。大学によって差はありますが、ここで聴診器が登場します。
 これについてはまた項を改めて説明します。
 以上でした。
 次は「少人数能動学習(チュートリアル)」について説明します。

専門教育課程-2:前項|もくじ|次項:専門教育課程-4
文責:Kumiko

よくあるシーン

A:「わたし、耳が聞こえにくくて。補聴器を使っているんです」
B:「(声を大きめにして)このくらいでいい?」
A:「いえ、大きくしたら聞こえるというわけではないんです」
B:「どれくらい聞こえているの?」
A:「えーと……(説明に困る)」
 よくある、ありそうなシーンです。
 Aさんは子供のときからの高度難聴がありますが、コミュニケーションは主に口話でしています。補聴器をしてもよく聞き取れないことも多く、そういうときは筆談をしています。
 Bさんは健聴の若い人で、同居しているおばあちゃんが「耳が遠くなってきた」というため、おばあちゃんには声を大きくして喋っています。

さて、こちらをご覧になっているみなさんに質問です。
この会話の中でなにが問題だと思われますか。
Aさんの問題点と、Bさんの問題点にわけて考えてみてください。
この記事の右下にある「コメント」を押して、みなさんのご意見を書き込んでください。聴覚障害の有無は問いません。幅広いご意見をお待ちしています。
締め切りは4月20日(金)です。
※ご意見の募集は締め切りました。

はじめに:前項|もくじ|次項:考察1
文責:Kumiko

専門教育課程-2

 道のりは長いですよ!
 あせらずに、ゆっくり。

 前回「専門教育課程-1」では、「こんな感じだよー」ということをお伝えしました。
 「なんだか大変そうだな、できるかな」なんて気分になったところで、「じゃあどうしたらできるんだろう?」ってところに入っていきたいと思います。
 ところで、「どうしたらできるのか」という対策は、個人のコミュニケーション手段や聴力の程度、大学の状況などに応じて変わっていきます。
 大切なことは、「自分が何を必要としているか知る」こと。
 それに対してどんな対策をとればいいかを考え、相談し、実行していくことになります。
【Case 1:友だちの力を借りる】
・ノートをこまめに、よくとる友だちの隣に座り、ノートを見せてもらう。
・友だちにノートテイクをしてもらう。
・過去の資料やプリントを上の学年からもらう。
 (試験は過去問で対応できるものも多い)
・講義が終わったあと、友達同士で勉強会をして聞き漏らしたところを補うという方法もあります。
【Case 2:ノートテイク】
 外部ボランティアでは、専門用語の多さに健聴者でも正確に聞き取ってノートテイクをすることが難しいです。
 その技術がある筑波大学などを除き、特に医学部単科の「医科大学」では、他学部との連携や過去に他学部で聴覚障害者を受け入れた実績がないので、外部からボランティアを呼ぶ方法は現実的ではありません。
 滋賀医科大学では、障害学生サポートサークル「ソレイユ」を立ち上げ、学生がノートテイクをしていました。
 ただし、学生によるノートテイクは「ノートテイク」の技術講習などを受けたわけではないので、不十分なところもあります。
【Case 3:パソコン要約筆記】
 筑波大学での場合です。
 筑波大学は、「聴覚障害者のための情報保障」が確立している筑波技術短大と提携し、パソコン要約筆記をつけています(他に、ノートテイク、手話通訳も可能です)。
 こういう大学を最初から選ぶのも手です。
 (筑波大学 障害学生支援委員会:http://www.human.tsukuba.ac.jp/shien/)
【Case 4:手話通訳】
 帝京大学での場合です。
 講義に医療手話のわかる手話通訳士をつけながら、講義を受けていました。すべての講義につくわけではないのがネックです。
【Case 5:FM補聴システム】
 補聴器や人工内耳のFM補聴システムを利用します。
 FM補聴システムとは、発信機(マイク)を講義をする人につけてもらい、マイク周辺の音を拾ってFM電波を補聴器や人工内耳につないだ受信機に飛ばす、というシステムです。雑音が入りにくくなります。
 聴力の程度にもよりますが、大学の講義室は高校よりも暗く、うるさい場合が多いので、これで聞こえが改善する人には有用と思います。聴力が悪いとこれをつけてもあまり改善しないこともあります。
 リオン株式会社(補聴器):RION-FM補聴器
 コクレア(人工内耳)やクラリオン(人工内耳)にもあります。
 医学科での情報保障は、残念ながらまだ発展途上にあります。筑波大学のようなところもありますが、特に単科大学では「難聴の学生は初めて」というところが多いでしょう。
 そのほかの一例ですが、滋賀医科大学では「講義プリントが不十分かつ、話す内容が多くて聴講するのみではわかりづらい」という講義に対し、「ソレイユ」から講義プリントの改善をお願いしました。そのことで聞こえる学生にとってもわかりやすいプリントとなった、ということがあります。
 ひとりで頑張るだけでは、きちんと必要な情報を得て身につけていくということが難しいです。同級生や大学と連携をとりながら、「やり方」を見つけていってください。
 この会の体験談の域を出ませんが、「じゃあどうしたらいいのか」というところで、こういう手もある、ということをお話しました。
 次は、実習、とくに解剖実習についてお話しようと思います。

専門教育課程-1:前項|もくじ|次項:専門教育課程-3
文責:Kumiko

専門教育課程-1

 一般教養課程を終えると、たいてい2年生からは専門教育課程に入ります。
 さあ、ここからがいよいよ「医学」を本格的に学ぶスタートライン。
 大まかに分けて専門教育課程には2段階あります。
 (1) 基礎医学
 (2) 臨床医学


(1) 基礎医学:病気(異常)についての本格的な勉強をする前に、人間の体の正常な構造や機能について、それから異常な構造の基礎、薬についての基礎などを勉強します。
解剖学 組織学 生理学 生化学 感染症学 薬理学 病理学 社会医学
それと、上の科目のそれぞれに実習があります(項を改めて説明します)
(2) 臨床医学:いわゆる、病気についての勉強です。ここでは一般的に病院といったときにイメージする「○○科」の勉強が主なものになってきます。
内科 外科 小児科 産婦人科 整形外科
眼科 耳鼻咽喉科 泌尿器科 皮膚科 放射線科 麻酔科 など

 さて、内容が難しくなってくるのも、学ぶ量が一気に増えるのもここからです。
 また、一般教養課程ではいくつかの必修と、選択できるものから決まった単位をとればよかったのですが、ここからは「全科目必修」になります。どの科目にも合格しなければ、進級できません(だいたい、試験で6割を取ることが必要です)。
 つまり、上で上げたような科目を全部、もちろん全部の科の勉強をして合格しないといけないわけです(医学生って、だから「○○科の専攻」ということはありません。全部の科を勉強するんですよ)。

 と、こう書いても、いざやってみないと実感がわかないかもしれません。
 そこで、高校までの授業と比べて違うところを表にしました。
 高校まで医学科(専門課程)
教科書薄い(1cmもない)分厚い(幅2cm~4cm)
(それだけ量が多い)
授業・講義の進行だいたい教科書通り教科書通りには進まない
スライドやプリントを用いての講義が多い(教科書通りにやっていたら時間が足りない)
教科書の進行おおむねページ順先生に指示されたページを開いて見る(プリントも同じく)
板書たいていの授業である板書はほとんどない
板書をきちんとする先生はめずらしく、まったくしない先生も多い(ノートをとりづらい)
学生の人数30~40人前後80人~100人前後
教室・講義室教壇と前の席までが近い最前列でも教壇まで距離がある(読唇をする人には唇が読みにくい)
教室の雑音たいていは静か講義室が広いのと、講義を受ける人数が多いので、高校より雑音が多い
教室の明るさ明るいスライドを使う時は暗い
(口もとが見えにくい)
その他 専門用語が多い(ノートテイク・手話通訳・要約筆記などしようにも専門用語がネックとなってしづらい)
 どんな感じか、うっすらと見えてきたでしょうか?「なんだか、大変そうだ」というくらいの感じが伝わればと思います。
 そう、ここからが大変です。
 と、脅すだけになっては駄目ですね。
 次は、聞こえに問題のある人が上のような「大学(それも医学科など)特有の講義」に、どうやったらついていけるだろうか?という対策をお話させてもらいます。

基礎教養課程:前項|もくじ|次項:専門教育課程-2
文責:Kumiko

基礎教養課程

 医学科に入学してはじめて出会う科目は、じつは「医学科らしい」ものではありません。
 大学によってそのカリキュラムも名称もさまざまですから、行きたい大学にどんな科目があるか、各大学のウェブサイトで調べてみてください。(「カリキュラム」や「シラバス」という言葉がキーワードです)。
 なかには筑波大学のように、この「基礎教養課程」がほとんどないところもあります。

 どんなことを学ぶのか?というと、
 まずは数学、生物学、化学、物理学といった理系の科目。
 それから英語と第二外国語。
 哲学、社会学、歴史、法学、美学、なども選択で学びます。
 医学関連としては、医学史といった科目もあり。
 他にもさまざまな科目があることでしょう。

 ところで、この科目名になんとなく見覚えがありませんか?
 高校で学んできた数学や生物学、化学、物理学、英語。
 もちろん、その内容はレベルアップしていますし、「大学らしい」講義ではあります。高校では学ばなかった、新しい知識に触れることができるでしょう。
 けれども、まだまだここは恐れるに足りません。
 高校までの勉強をクリアして医学科に入学した人なら、それまでとあまり変わらずについていくことのできるものだと思います。

 けれども、あとで振り返ってみて思うのは、じつはこの時期から周りの人たちに「聴覚障害」のことをジワジワと理解していってもらうことが必要だということでした。
 (聴覚障害のあるなしにかかわらず)医学科をめざし、そこに合格して勉強をはじめる、という人は「自分の力でやっていける」「自分の力でやらなければ」と思う傾向が強いように思います。
 もちろんそれはすばらしいことなのですが、今6年生のわたしが思うに、聞こえの問題があってもなくても医学科という場所は(そして社会では)、お互いに協力してやっていかなければいけないことがたくさんあります。解剖や生理学といった科目の実習も、病院実習もグループ行動になりますし、周りの人の「あの科目は~~だと落ちるらしい」なんて噂や耳学問もあなどれません。

 だから最初のこの時期は、めんどくさがらずに、自分の力で大丈夫と思い込まずに、自分の聞こえについて先生や同じ学年の友達に説明することが、あとあとの自分のためになってくると思います。
 「入学前に」でも書きましたが、大学との話し合いができる状況をつくり、そのなかで聴覚障害を持つ人が医学を学ぶことについての理解を深めることが必要です。

入学前に:前項|もくじ|次項:専門教育課程-1
文責:Kumiko

はじめに

 とても基本的なことですが、わかってるようでわかっていない、聴覚障害を持っている当の本人でもうまく説明のできない「聴覚障害」ということ。
 聞こえている人に、自分の聞こえかたはあなたと違うんだよ、ということを説明するのは、けっこう骨が折れる作業です。
 感覚というやつはやっかいなもので、人にはその人の感覚しかないから、「自分と違う感じかたをする人がいる」ということがわかっても、それがどういう感じ方なのかは実感としてわかった気持ちになりません。「自分と違う感じ方かたをする人がいる」とわかっていれば良いほうで、「自分と同じように人も感じている」と思っている人だって、もう数え切れないくらい。困ったね。
 (そう、聴覚障害者だって、視覚障害者の見え方が違う、ということになかなか気づかなかったりします。まったく見えないという誤解や、色覚障害者に「この色は何色に見える」と質問するだとか。この質問のナンセンスさに気づかない人、危ないですよー)。

 さて、そんなヤッカイな「聞こえかたが違うんだ」という問題に、「聴覚障害とは」なんて仰々しい名前のこのカテゴリでは迫ってみようと思います。

次項:よくあるシーン
文責:Kumiko

入学前に

 「合格!」
 自分の受験番号がある、とわかった瞬間、頭の中は合格の感動でいっぱいになってしまいますよね。しんどい受験勉強から開放されて、もう心は大学生活に飛んじゃったりして。

 でも、ちょっと待ってください。

 じつは、受験のとき大学が聴覚障害への対応を受理していたからといって、先生がたが「聴覚障害の学生が医学科に合格した」ということを知っておられるとは限りません。
 ほとんどの医学科では、いまだに聴覚障害者が入学してくることは前例のないことです。
 むかしの医師法にあった絶対的欠格条項―「目の見えないもの、耳の聞こえないもの、口のきけないものには免許を与えない」が、改正されたことを知らずに聴覚障害者は医者になれないと思っている先生だって、もしかしたらまだいらっしゃるかもしれません。
 高校のときも大丈夫だったから、問題ないと考えますか?
 わたしも、そう考えて入学前はとくに何もしませんでした。
 ところが、こういう状況で医学を学んでいくのは、入学前に考えるよりも難しいものです。
 ですから、聴覚に問題があるけれど、これから医学科に入学するという人にむけて、「入学前に、大学との話し合いをしたほうがいい」と勧めます。

 具体的にどういうことを話し合えばよいのか?
 まず、入学前は(当然ながら)大学のことを何も知りません。そういう状態でただ不安がっていても建設的ではないので、これから起こるだろうこと、医学科に特徴的なカリキュラムなどについては今後説明していきます。
 いまは、伝えたほうがいいと思われることを箇条書きにしておくだけにとどめます。
 もちろん下のことだけがすべてではありません。
 状況や大学の理解度・協力度に応じて、どうするべきかを考えていってください。迷ったとき、不安なとき、困ったときはこの会に連絡してください。

【はじめに:どこに伝えるか】
 合格の手続きをするとき、学生課など、手続きを受ける部署があります。その部署の人に聴覚障害があることや、そのことで大学に相談したいことがあることを伝えましょう。学生のための相談窓口がある場合もあり、そういう窓口を利用するのも手です。
 同じことを、違う人にむけて何回も話さなければならないかもしれません。根気強く、まわりの人に理解してもらうよう努めることが、今後の助けになるでしょう。

【入学前に伝えたほうがいいこと】
 入学が決まったとき、大学に伝えておきたいことには以下のものがあります。
(1) 「聴覚障害がある」ということ
(2) 自分の聞こえの程度とコミュニケーション手段
(3) 今後関わる先生がたへの周知
 下記にて、各項目について説明させていただきます。
(1) 「聴覚障害がある」ということ
 まず、自分の状況を伝えましょう。
 繰り返しますが受験のときに申請したからといって、大学に聴覚障害のある人を受け入れる心構えやシステムができているとは限りません。むしろ、そうでないことのほうが多いです。
 だから自分の聴覚障害のことについて、大学と話をしたい旨を学生課などに伝えます。
 大学とのお話では、学生の相談窓口になってくださっている先生、学年担任の先生などに同席してしていただくと良いかもしれません。

(2) 自分の聞こえの程度とコミュニケーション手段
 お話のできる場が設けられたら、次に自分の聞こえの程度とコミュニケーション手段を伝えるようにします。それには「自分の聴覚障害」ということを、自分で文字にして整理しておく必要があります。
 もし、あなたが高校までうまく授業を受けることができているなら、あなた自身も大学でどのようなサポートが必要かが、わからないことが多いでしょう。
 基礎教養課程では、高校までのやり方と同じようにできることが多いので、当面は高校までで必要だったサポート(たとえば席を前にするなど)を伝えるようにすれば十分だと思います。
 専門教育課程に入ってからはまたサポートが異なってくると思いますが、それは今後の大学との話し合いの中で、追い追い伝えていってください。

(3) 今後関わる先生がたへの周知
 まず、1年生で関わることになる先生がたへ、聴覚障害のある学生がいるということと、聴覚障害についての状況、授業でしてほしい配慮といったものを知らせていただくようにお願いします。併せて聴覚障害についての説明もあれば、良いかもしれません。

 聴覚障害についての説明に関しては PEPNet-Japan の、以下のページが説明する際にも役立つものと思います。
http://www.tsukuba-tech.ac.jp/ce/xoops/modules/tinyd4/index.php?id=17&tmid=72

 最後に、
 「聞こえる人は、聞こえない人の状況がよくわからない」
 「そのため、どう支援していいのかもわからない」

 ということを頭においておいてください。
 そして、学生生活を円滑に送れるように、相互の理解を深めるためにも、大学との話し合いができる状況を築いていってください。
 そしてこれからの医学生生活を楽しんでください。

受験当日(閑話休題):前項|もくじ|次項:基礎教養課程
文責:Kumiko

受験当日(閑話休題)

 いよいよ受験を迎える、という日は朝から緊張した面持ち。
 ここでは閑話休題、わたしが受験したときのことを思い出しながら、いま改めて思うことなどをつづってみます。

【センター試験】
 受験に関する注意事項は、文書での説明となりました。
 それ以外はとくに何もしていません。
 いまなら、英語のリスニングへの対応も必要ですね。

【2次試験:滋賀医科大学(前期日程)】
 センター試験と同じく、注意事項を文書で説明していただきました。また、滋賀医大はグループ面接なので、(あらかじめ決めていたことですが)単独での面接となりました。
 まったくの余談ですが、このときの面接官がいまはもう亡くなられた当時の耳鼻咽喉科教授だったとは、あとになって知ったことです。
 面接は、グループなら単独での面接に変更してもらうべきでしょう。ディスカッションをするグループ面接では、どうしてもあちらこちらからの発言についていけずに、話の流れがわからないまま終了、ということになりかねません。また、自分の実力が発揮できないばかりではなく、グループ面接で同じグループになった他の受験生に戸惑いを与え、彼らの実力が発揮できないことも考えられます。
 「大丈夫、いつもディスカッションしているから」
 その「ディスカッション」は、周囲の人の協力によって成り立っていませんか?聞こえが不十分な場合、わからないことがあったとき気軽に聞ける人がいて、それは成り立ちます。
 受験では、初対面の人とディスカッションしなければなりません。
 自分にとっても、他の受験生にとっても、受験という以上のストレスがかかります。
 単独の面接は不必要に心配する必要はありません。
 あらかじめ、聞き返すことがあるだろうことや、コミュニケーションに時間がかかるかもしれないこと、(必要なら)手話通訳をつけてほしいことなどを伝えておいてください。
 そして、当日は時間がかかっても相手の言うことをきちんと(自分のやり方で)受け止め、(自分のやり方で)伝えてください。

 筆記試験に関しては、いままで勉強してきたことをぶつけるだけです!
 とはいえ、6年も経ったいまだから言えるんであって、当時はセンターも2次試験も「やばい、だめかも」と青ざめていたわけですが……。

受験する前のこと:前項|もくじ|次項:入学前に
文責:Kumiko
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